ド畜生黙示録

オタク的ないろんなこと

トール×エルマがアツすぎる(メイドラゴン12巻の感想)

メイドラゴンにハマってます

ド畜生です。

今、ドハマリしているコンテンツの一つが『小林さんちのメイドラゴン』です。

異種族系の話は大好物なのですが、なんというか流行りに流行りすぎた結果、手が出せずにいたいつもの逆張りなのですが、先日奮発して原作を一気に買ったのです。

これがまぁ面白いのなんの。

作者であるクール教信者氏の作品は『チチチチ』しか読んだことがなかったのですが(この時点でろくでもない)、やはりクール教信者氏は作品作りが本当に上手いなと感嘆させられ。

『メイドラゴン』は基本は日常系なのですが、シリアスパートとの塩梅が非常によく、話に飽きが来ないようになっています。

どうしても日常系オンリーだと話がダレてしまうこともままあると思うので、その辺よく考えられています。(逆に言えば全くシリアス嫌いな人はちょっと合わないかも)

原作で言うとおおよそ4巻ごとに大きめのシリアスパートが挟まっており、話が大きく動きます。

アニメで言うと、2期であるSのイルル登場パートあたりがその辺。

長命なドラゴンと、それに比べて矮小な存在である人間と…相容れない存在であるはずの二者が、どのように相互理解を育むのか。

あるいは、ドラゴン同士ですらいがみ合い、対立し、傷ついて、調和・混沌・傍観、それぞれの思惑は交錯して行く。

人間たちと交わり、ドラゴン達は何を目指すのか。

そういう、日常の中に非日常が入り込んでいくような話が私は非常に好きです。

おそらくですが…クール教信者氏の話が本当に面白いと感じるのは、人物像にブレがなく、各々がそれぞれ哲学を抱えていて、それが明確にわかるように表現されているということ。

小林さんが考えていることも、トールが考えていることも、エルマが考えていることも、みんな違う。

それぞれの立場があって、事情があって、それでも共に生きていく。

後述しますが、トールとエルマは小林さんの住む世界に来る前からも交流があり、一筋縄では行かない…言わば腐れ縁のような仲。

で、トール×エルマがなんでこうもアツくなったかというとつい先日発売された12巻でトールとエルマが結婚しました。(オタク特有の大嘘)

いや、嘘じゃないんですって。俺見たんですもん。結婚したの。幻覚じゃないって。

※以下、アニメしか見てない人とか向け。アニメ2期はおおよそ4巻~7巻付近の内容を再編したものになっていますのでそれ以降の話がネタバレとしてガッツリ出てきます。

人物の背景

トール

トールは混沌勢のドラゴン。

混沌勢は破壊を楽しんだりする過激派もいますが、基本的には神の支配に抗おうとする派閥。

人間は敵と教えられることが多いようですが…(イルルがそうであったように)

トールは混沌勢の中でもかなり特殊な育ち方をしています。

というのも、トールの父親、終焉帝ダモクレスは、混沌勢というか…ドラゴンの中でも非常に理知的で、いいお父さんだったのです。

トールに自分の考えを持たせるために自由に行動させたという背景があり、それ故に色々なものを見て経験して…

その過程でエルマに出会います。

エルマ

調和勢のドラゴン。

調和勢は神と人間との世界を良しとし、その調和を保とうとする派閥。

まぁその調和勢の中でもいろいろあったせいで一悶着起きたのが12巻なのですが…

頑ななところがあり、小林さんの世界に来た後も、度々トールをもとの世界に連れ返そうとしたりしました。

元々いた世界では、巫女として崇められていたところでトールと出会ったという背景があります。

力あるものとして、人間たちの争いを調停する”奇跡の巫女”として。

もちろんドラゴンであるということは隠してですが。

終焉帝(ダモクレス

トールのお父さん。

当人曰く不出来な親と言っていますが、自分の娘に自分の考えを持ってほしいと自由にさせる親が悪い親なわけがありません。

アニメ版では軽く悪役みたいに描かれそうになってますが、漫画版ではかなり違います。

1期で終焉帝が初めて小林さんのところに来た際とか。

あっさり帰るんですよね、終焉帝。アニメだと最終回付近の話にするためにバトルしちゃってますが。

トールが陣営の枠組みにとらわれることを良しとせず、自由にさせてくれた本当に優しいお父さんです。

ちなみにスマホとかも持ってちゃっかり現代社会にフィットしてます。

テルネ

ババァお姉ちゃん。

エルマのお祖母ちゃん可愛い可愛いテルネお姉ちゃん。

のじゃロリ。

おそらくアニメでは一切触れられていなかった存在。

終焉帝・キムンカムイと共に保護者参観(?)に来ていた。

調和勢のナンバー2。

…終焉帝は混沌の有力者だし小林んちマジやばくね?(アニメノリ)

トールとエルマ

トールもエルマも、勢力の中では変わり者でした。

自分の目で物事を見定めようとするトール、美味しいものにやたら固執する(故に人柱を良しとしない)エルマ。

互いを変わり者と認識した上で、二人(二匹?)は行動を共にするようになります。

トール曰く、

「種族全体の目的よりも個人でやりたいことをやってるエルマに興味がありました」

小林さんちのメイドラゴン』5巻より

とのこと。

トール自身も終焉帝の図らいによってそんな感じで動いていたわけですから、波長が合ったのかもしれません。

しかし、ある出来事をきっかけに、トールとエルマは袂を分かつことになります。

それは、トールが人間たちの平和の象徴である宮殿を破壊したこと。

これだけ聞けばトールが血迷ったのかとでも思いますが…

要は、人間たちにヨイショされて、うまいこと利用されているエルマを見て居た堪れなくなったというか、呆れ返ったとでも言いましょうか。

混沌・調和という枠組みに囚われず動いていたはずのエルマが、結局人間という枠組みの中に組み込まれているのを見ての行動でした。

それでもエルマは、

「祈りとは尊いものだ だからこそ人を助けると気分がよかった」

小林さんちのメイドラゴン』6巻より

と、あくまでも調和勢としての立場を頑なにし、トールとエルマは決別。

それから、トールが小林さんの世界に来たのを嗅ぎつけてか連れて帰ろうとしたのが3巻での出来事でした。

しかし、トールは小林さんと共に過ごし、エルマもまた小林さんの会社でOLとして働き、丸くなったのでしょうか。

7巻では、互いの思いを肉体言語と共にぶつけ、和解。

「昔みたいに私と仲良くしろぉ!! ばかぁ」

小林さんちのメイドラゴン』7巻より

です。もうこの時点でだいぶアツいです。この話はたしかアニメ2期でもやってましたよね。

エルマは死んだと聞いていたトールのことを誰よりも心配していたのに、当の本人は人間とよろしくやっていて羨ましかったという。

正直、ここでトールとエルマの因縁は決着がついたと思っていました。

結び

またもや様子がおかしくなり始めたのは10巻のこと。

エルマが妙にしおらしくなり、トールに簡単に食べ物を譲ったりする始末。

その後もちらほら、エルマの言動がおかしなことになり、その真相はついに11巻の最後で明らかになります。

それは、エルマに”結びの時期”が来たということでした。

エルマのババァお姉ちゃんことテルネが小林さんの世界に度々姿を現すようになっていたのはそういうことで、要は政略結婚です。

元より政略結婚をすることを前提にしていたために、エルマは自由に動くことが出来たし、テルネもそのようにさせていたという経緯が。

調和勢の中にも派閥があり、それを治めるために結びをしようというのです。

相手は屠龍派という、混沌勢を滅ぼして調和をもたらそうとする過激派。(エルマのとこのは神和派)

当然小林さんもトールも納得行くわけがありませんが、当のエルマ本人は意を決している様子。

カンナのときとは違うと。

カンナのときというのは8巻での出来事。

カンナの父親、キムンカムイがカンナを勢力争いのために連れ戻そうとした際の話です。

キムンカムイは親という概念をほぼ有しておらず、カンナを放任(というよりほぼネグレクト)し、そのくせ必要になったときに連れ戻すというとんでもないクズでした。(その後多少なりとも父親らしくはなりましたが)

つまりカンナの意志を全く無視した行いであり、なんやかんやでキムンカムイをぶっ倒してカンナが小林さんの世界に帰ることができたという話。

しかし今回はエルマ本人の意志で結婚するから大丈夫だと言うのです。

…そう言うエルマの表情を、トールは、エルマが巫女として崇められ始めたときの表情に重ねていました。


お前とだけは結婚しない

「だが トール お前とだけは結婚しない」

小林さんちのメイドラゴン』12巻より

結婚について、トールとエルマが話している時のセリフです。

どういうことかというと、結婚ということについて、トールは小林さんと住んでいる今の状態がそうだ、と言い、それに対してエルマはそれが結婚ならこの小さい町で近しい人とはみんな結婚しているぞと冗談交じりに返します。

重婚罪なんてたった2年の刑期だ、とエルマは言い二人は笑いますが、それに続くセリフがこれ。

調和勢と混沌勢は相容れない…共存は一時的なものだとエルマは言います。

この世界ではそんなこと忘れませんかとトールは返しますが、エルマは自分の世界にも居場所があるのだ、と言い…

トールはエルマをしがらみばかりだと罵り、エルマはトールを無責任だと罵り。

「私達は結局こんなものなのかもな」

「ああ… お前なんか…」

小林さんちのメイドラゴン』12巻より

激しい喧嘩別れでないだけに、かえって絶望感が強いシーンでした。

懲役2年なんて一瞬だよな

小林さんはトールに言います。

以前喧嘩したときはエルマの方から折れたから良かったけど、今度はトールの方から行かなきゃいけないよと。

またしても小林さんには秘策があるのですが(ここまでネタバレするとアレなので今回は省きますが)、それを教える前に、トールはエルマのこと好き?と確認。

なんと答えたかはわからなくなっていますが。

なんやかんやあって、エルマは結局契を結ぶ場まで運ばれてしまいます。

その時ふと、きまぐれでトールが作った弁当の香りが漂い…

衆目の前でエルマは泣き叫びます。

嫌だ、帰りたい。

私はただあそこにいたかったんだ、と。

そして彼の名前を、トール!!と。叫ぶと。

そのトールが式場を突き破り現れて、エルマをお姫様抱っこで連れ出して。

「私は…調和勢でお前の敵だぞ」

「小林さんの会社の貴重な戦力だ」

「お前は…! 小林さんが好きなくせに…」

「そうだ」

「私に!! 嫌いだって言ったくせに!!」

「そうだな」

「だったらさっさと私なんか忘れて…!」

「エルマ」

「懲役2年なんて一瞬だよな」

「え…」

「え!?」

小林さんちのメイドラゴン』12巻より

感情吐露タイム

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これは、何? 本当に何?

俺は何を見せられたの?結婚?トルエルの結婚?逃避行?トールがエルマを連れ出しちゃう逃避行なんですか???????ドラマ?映画?なぁにこれぇ?????キザすぎない?キザすぎないかトールさん?俺の心はこのセリフ一つで落ちきったぞ???なぁ???

おわかりかと思いますが解説

つまりこれは、重婚は懲役2年だというエルマに対して、懲役2年なんかなんてことはないとトールがプロポーズ告白白状したという。

なんという秀逸なセリフなんでしょうか。

トールなりに、照れ隠しのつもりなんでしょうか。

いや、直接的ですが。めっちゃ直接ですが。

エルマさんめっちゃ赤面してましたが。

このセリフ一つで心酔しました。トール×エルマに。

この後も色々やりとりがあるので買ってくれ。12巻。頼む。

選択と自由

トールは神剣で死にかけていたところを小林さんに救われたわけですが、そもそもなぜそんなことになったかというと、無謀にも単騎で神にカチコミしたからで。

なぜそんなことになったかというと…全てを終わらせたかったのです。トールは。

エルマは、向こうの世界での別れ際に”自らの意思”で共に行動してくれたことに感謝を述べます。

自らの意思で。

トールはなぜメイドを目指すようになったのかという話は、アニメでもされていましたね。

盗賊の子の話です。

逃げおおせてきた盗賊の女の子が、トールと共にしばらく場所を共有していたときの話。

彼女は自由を手にしたら何をすると答えたか…メイドになると答えました。

トールは自ら隷属することに疑問を述べますが、盗賊の子は…自らの意思で選択して隷属するのだと。そう答えました。

盗賊になるくらいしか彼女には選択肢がなかったから。

後にその盗賊の子はメイドになることができました。そんなことトールは知る余地もありませんが。

私が原作で最も好きな話ですし、メイドラゴンに惹かれたきっかけ、ひいてはクール教信者氏の哲学を垣間見た瞬間でもありました。

トールは疑問に思いました。

本当に自由なのだろうかと。

自らの意思でと言われた時、真っ先に思い出したのはその盗賊の子でした。

何も選べない。

混沌勢に生まれ、終焉帝の娘として生まれ。

枠組みに囚われて。

調和勢とは相容ることができなくて。

そんな不自由を嫌って、トールは神に挑んで、敗れました。

一方で、エルマは?

エルマは水の中で生まれ、水を羨みました。

生まれたときから自分の輪郭を押し付けられ、調和勢のために動くことを強いられ。

でも自分は水にはなれないと諦めて。

調和勢のために働くことで自分の輪郭を保つので精一杯だったエルマ。

だからトールを羨んでいました。そんなのずるい、と。

トールとエルマはライバルとだけあって、そっくりに、かつ対照的に描かれているように思います。

生まれながらにして不自由。

ドラゴンという上位存在でありながら、選択肢などない。

それは混沌に生まれたトールも、調和に生まれたエルマも同じ。

しかし、混沌に生まれながらも自由に生き、選択を手につかもうとして、死にかけながらも最後に小林さんにたどり着いたトール。

調和に生まれながらも、その輪郭を厳格に与えられ、それを守り続け、選択することを拒んできたエルマとは対照的です。

だからこそ12巻での出来事で、本当の意味で二人の因縁に決着がついたように思えます。

二人の間にあった障壁…選択を諦めたか否か…そうしたわだかまりは消えました。

きっとこれからは二人は幸せに過ごしてくれることでしょう。

こうした丁寧な描写が『小林さんちのメイドラゴン』の魅力だと思いますし、トール×エルマが好きになってしまった理由です。

アニメしか見たことない方、ぜひ単行本、買おう。

余談

クール教信者氏の作品は他に『チチチチ』しか読んだことがないということを冒頭に書きました。

内容としてはほぼエロコメで、氏の性癖詰め合わせ性癖捻じ曲げスターターキットみたいな様相なのですが、実は中身が相当メイドラゴンに近いものがありまして。

例えば、「いいですよね、職業選択の自由」というセリフがあったり。(まるで今まではなかったかのような)

あるいは、相容れない者同士の交流(チチチチでは一般社会と”ムラ社会”の人間というような)を描いていたりとか。

氏は選択・自由、尊重、相互理解、そうしたものを主軸に据えて物語を構築しているんじゃないかなぁと思う節があります。

や、二作品しか見ていないので偶然その二つが似通っただけかもしれませんが。

軸がしっかり通った作品ってやっぱり面白いんだなぁって思います。

強いて言うなら『チチチチ』は”ファンタジー抜きのドロドロした小林さんとルコアが出てくる『メイドラゴン』”でしょうか。

いや乳からフェロモンが出たりファンタジーもぶっ飛びはしますが…

乳が皆ヤバいし…ラストオリジンよりある意味ヤバい。

乳が大丈夫なら『チチチチ』もぜひどうぞ。多分想像してるのと同じだけど違うのをお出しされてひっくり返る。マジで。