ド畜生黙示録

オタク的ないろんなこと

ブルーアーカイブ・エデン条約編を終えて

※以下の文章はブルーアーカイブメインストーリー(対策委員会編・エデン条約編)の大幅なネタバレを含みます。

総括

人物像やセリフの一つ一つに至るまで描写が非常に繊細。

キャラクターの魅力を最大限引き出し、飽きの来ないストーリーに仕上げられている。

とにかく読め。

何から始めればいいのやら

とにかく本当に良かった。
それ以外言葉が見当たらず、友人と感想戦をする際にはもう何を言えばいいのかわからなくなるほどには。

ソシャゲーマーなら賛同を得られると思うのだが、この高揚感はFGOの終局特異点のストーリーを読んでいる感覚に勝るとも劣らない、あるいはそれ以上かもしれないという体験だった。

第三部でここまでの完成度のストーリーをお出しされると今後どうなってしまうのか期待の反面揺り戻しが怖いレベルである。

感想を述べるにあたって

ブルアカを知らない人でも読んで面白い記事にするか、あるいは知っている人向けの記事にするかで結構悩むのだけども、正直イチから説明してブルアカ、やろう!ってやっても、ネタバレになってプレイする人が増えるでもないし、やはりここはプレイ済みの人と感動を共有したいという意味も込めて、プレイ済みの人向けの記事にしたいと思う。

どうすれば読みやすい記事になるかなぁと思案しているのだけれど、ソシャゲにおけるストーリーの諸要素、キャラクター・シナリオ・その他演出(音楽など)くらいに絞って語ったほうがまとまりが良いかなと思うのでそうさせていただく。

キャラクター

補習授業部

ヒフミ

自称平凡な女の子。

その実態はペロロ様大好きな覆面水着団のリーダー”ファウスト”である…

ナギサ様に疑いをかけられながら、その上潜入捜査という汚い役回りをさせられていた人。

覆面水着団は、キヴォトスの治安の悪さ、あるいは対策委員会シロコの強盗未遂癖(?)を象徴するものとして度々ネタにされてきたようだが…それを綺麗に伏線として回収する形となった。

というのも、そもそも補習授業部はティーパーティー所属のナギサが、エデン条約締結を阻止しようとする裏切り者がいるという疑心暗鬼に陥ったために設立された部活である。

というかもはやそうなると部活と呼べるかすら怪しいが。(最悪四人とも退学もやむないとナギサは考えていたため)

で、そのメンバーの中にヒフミが入っていたのは、ブラックマーケットに出入り・また犯罪集団のリーダーであるという噂があったためであり…

つまるところ、覆面水着団が存在しなければ、今の形の補習授業部は存在し得なかった。

そして、後述するがその覆面はアズサへの語りかけへの重要なピースとなる。

あはは…

平凡な女の子であるからこそできることがあったし、きっと誰よりもハッピーエンドを望み、それを成し遂げてしまった。

お前のような平凡がいるか。

彼女の頑張りなしでは補習授業部は破綻していたであろう。

まさしく主人公の器であった。

コハル

ある意味エデン条約編一番クラスの被害者。

元正義実現委員会のメンバーであるが、成績が悪すぎるということで半ば数合わせのような形で補習授業部へ。

プロフィールだけ見ると、エッチな本を集めているムッツリスケベのお馬鹿さんというキャラ付けだが、その通りである。他のキャラと違って、プロフィールとの差異とか、重苦しいバックボーンはあまりない。

しかし、彼女はエデン条約編を通して大きく成長した。

印象的だったのは、彼女が孤独を知っていると告白したこと。

ひとりでいることの悲しさ。

おそらくこれは…自分がエリートなどではないと本当は知っているということの告白である。

そうしたことを認めて、ヒフミを激励するまでにメンタルが強くなったコハル。

虐げられるミカを前にして、正義を実現しようと体を張れるようにまでなったコハル。

バカキャラ扱いされるのが憚られるほどの成長ぶりであった。

ハナコ

pixivで見た。

言うまでもなくブルアカのやべーやつ筆頭である。

しかしエデン条約編では普段と大きく異なる姿を見せた。

彼女は実は、1年生時点で3年生のテストを満点通過するほどの超絶エリートであったことが明かされる。

周囲からの過剰な期待に耐えきれず、セイアの諭しを得て今の姿へ。

重要なのは、”実は真面目”ではないことである。

”色々とたしなんでいる”方が真の姿であり、それを打ち明けられる補習授業部や先生と出会ったことは本当に幸運であったであろう。

エデン条約編における重要な語り手の一人であるように思える。

聡明な彼女はまるで探偵のごとくであり、状況分析に非常に長けていた。

彼女の解説なしでは何が起こっているのやらというシーンもあったのでは。

…もし彼女がトリニティの生まれでなかったら?補習授業部のみんな、先生と出会っていなかったら?

アリウススクワッドのようになっていた未来もあると私は思う。

ひょっとすると、補習授業部の中で一番アリウススクワッドに親和性が高かったのはアズサではなく、むしろハナコの方なのではないかと。

”Vanitas vanitatum omnia vanitas."

全ては虚しい。

彼女にとって、トリニティでの学園生活は空しいものであった。

「…とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです。」

世の虚しさを誰よりも知っていたのは、アズサよりよほどハナコの方だろうと思わせる象徴的なセリフである。

逆に言えば、学園生活の楽しさを知ったのは、セイアないし補習授業部との出会いがあったからこそである。(これは描写されていることではないが、トリニティでいじめがあるという事実・モモトークでの内容…体育準備室に閉じ込められていたということから、ハナコ自身がいじめにあっていたとする考察すらある)

彼女もまた、エデン条約編を通して成長した人物のうちの一人なのである。

アズサ

戦闘狂。

正義実現委員会とソロで戦い抜いたやべーやつ。

最初は親しいふりをする部だなんて言っていたのに、時間を重ねるにつれて、補習授業部を居場所の一つとして認め始めた。

その正体はトリニティの裏切り者…を装ったアリウススクワッドの裏切り者。

つまり二重スパイである。

ナギサ襲撃計画からナギサを守るためにトリニティへ転校してきた。

ティーパーティーのセイアを襲撃した際に、ヘイローの破壊を行おうとした人物。

全ては虚しいと言いながらも、決して抵抗することを諦めなかった。

「…うん。たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。」

彼女の精神性を象徴するセリフである。

これを聞いた時はボロボロと涙をこぼしてしまった。

本当に強い子である。

ティーパーティ

ナギサ

脳破壊女

ティーパーティー、すなわちトリニティの実質的な生徒会のホスト、生徒会長。

補習授業部を立ち上げた張本人である。

疑心暗鬼に陥り、誰も信じられなくなっていた。

はっきり言ってやっていることは最悪である。

罪がないであろう人物にすら罪をなすりつけて退学にまで追いやろうとしていたのだから。

しかしセイアが襲撃され、次は自分だと思うがためとなれば、無理はないのかもしれない。

悲しいことにその報いか脳を破壊され、元からどこにでもティーセットを持ち運ぶ女としてネタになっていたのに対策委員会編での威厳は粉々になりもはやネタキャラと化してしまった。

あはは…

ミカ

ロールケーキを突っ込まれる女

ナギサの幼馴染。

アリウスと手を組んでいた主犯。

つまり、トリニティの真の裏切り者である。

体育館で彼女が現れた時の先生たちの脳の破壊具合はナギサ並だったであろう。

なぜそんなことになってしまったのか。

彼女とて、セイアを殺すつもりはなかった。

しかし、アリウスの暴走により、過激化、セイアは死亡(したことに)。

後に引けなくなってしまったミカはナギサをも手に掛けようとした、ということである。

これを鑑みるに…先に脳が破壊されていたのはどちらかというと彼女である。

ゲヘナが憎くて憎くて仕方なかったミカ。

それを無理やりに合理化しようとしてしまった事の顛末がこれである。

誰よりもまっすぐであったために、憎しみにもまっすぐになってしまった。

加害者でもあり、彼女もまた被害者の一人なのだろう。

セイア

エデン条約編の語り部

…と思いきや違った人。

予知能力がある。

実は予知能力があるにも関わらず、その先を怖がって見ていなかった引きこもりであったという。

こういうチート能力を得ているキャラクターはあまり好かれないというか、セイアも例に漏れず達観している様子だったにも関わらずそういうことではありませんでしたというやり方は本当に上手いと思った。

下ネタに弱い。かわいい。

アリウススクワッド

アリウス分校のリーダー格的な人たち。

わからないことが多すぎるのでひとまとめにさせていただくが…

要はヒフミ←→アズサ←アツコ←サオリ

こういうことじゃな!?(違う)

…まぁ冗談はさておき、権力争いとかそういうの抜きに、明確な敵意を持った初めての生徒かもしれない。

憎しみを植え付けられた悲しき生徒たち。

果たして実装の日は来るのだろうか。

痛いですねぇ…苦しいですねぇ…

対策委員会

激アツのシーンで現れた。

美味しいところだけ持っていったなぁ…

あんな逼迫したシーンだったのに飄々としている、さすが覆面水着団。

その他

ハスミ

キュートな一面が見られた。

正義実現委員会とて、深夜に外出してダイエットを無視してパフェを3つも食べてしまうなんて…

それに、コハルのとても良い先輩であるという描写は、胸の温まるものであった。

ツルギ

個人的にエデン条約編でめちゃくちゃ株を上げたうちの一人だと思う。

「落ち着け。」の一言が本当にかっこよかった。

普段は冷静になっているハスミと対照的な様子が描かれ、彼女が正義実現委員会の委員長である所以が明らかになったように思える。

マコト

反対に元からなかった株を落とした人。

アホなの?馬鹿なの?死ぬの?

便利屋と違って洒落にならないネタ要員になる予感。

アフロで許された…許されたか…???

美食研究会

テロリストが過ぎる。

もうちょっと自重してもろて…

フウカ

かわいそう…1周年PVでスクーターに乗ってたのはエデン条約編で新車を沈められたからでしょうなぁ。

頑張れフウカちゃん…

ヒナ

ヒナちゃん持ってない人は、普段の様子と全く違う突然の引きこもりにびっくり。

私もその一人。

やっと休めると思った矢先にエデン条約があのザマなので引きこもりたくなってしまったのだろう。

彼女とて、まだ未熟な生徒なのである。それを象徴するようなキャラクターであったように思える。

あとホシノへ一方的にやたらデカい感情が向けられているのがわかったのも大きい。

ストーリー

第一章

落第を免れるためにみんなで合宿…という王道な学園ストーリーの水面下で、裏切り者を探す…という内容である。

そもそも裏切り者は存在しない(強いて言うならミカだった)ので、完全に杞憂なのだが、そのことは読み進めなければわからない。

スリードを散りばめつつ、ナギサが陥っていた疑心暗鬼を読み手が追体験できるような演出の仕方をしている。

ナギサの謎に見えるような行動の数々も、二章を読めばわかるようになっているし、ギャグパートに含まれているセリフも、先生のセイアに対する語りかけのパーツになっている。

すなわち、「下着も水着と信じれば水着になってしまう」というロジックである。

五つ目の古則、楽園の証明のパラドックス…それに対して先生はどのような答えを導くのか。

この話から、アズサがセイアと面識があることも匂わせ、またハナコもセイアとの面識があり、なおかつ何か知っていることを匂わせる…

こんなこと誰も思いつかんて…

こういうところが台詞回しの丁寧さを感じる所以。

ストーリーの欠片一つたりとも無駄にせず、丁寧に回収していく姿勢に膝を打つわけですなぁ。

一章の最後にはミカの口から裏切り者はアズサだ、と告げられ、アズサを守って欲しい…と。

どういうことなんだ!?と困惑しながら一章は幕を閉じる…

第二章

スリードが一つずつ紐解かれ、美食研究会のテロリストっぷりも披露されつつストーリーは進んでいく。

ナギサの策略によって第二回の試験は範囲の拡大、合格ボーダーの引き上げ、さらには試験地がゲヘナになるというドタバタっぷり。

学園の日常と、キヴォトスの非日常っぷりがよくわかるようになっている。温泉開発部ってなんだよ…

そして最終試験前日、アズサの告白。

”トリニティの裏切り者”は自分だと。

自分のせいで補習授業部はこんな目にあっているのだと。

でもそうじゃないと先生は言う。

これは、誰かを信じられなかったことが招いた出来事ことなのだと。

信じること…エデン条約編で重要なキーワード。

その断片がここでちらと顔を見せる。

試験当日、補習授業部の皆でアリウスの襲撃を阻止しようと奮闘する。

アズサが見張りを行っていたのも、ブービートラップの設置を行っていたのも全てはこのためだったのだ。

掃除をする時に銃を携帯していたり、襲撃に備えていたという行動原理はここで明確になったように思える。

アリウスの生徒達を撃破していき、計画は順調かのように思われたが、体育館に真の黒幕が現れる。

エイアの襲撃も、ナギサ襲撃計画も、全て裏で手をこまねいていたのはミカだった…

ミカが根回ししたために、ティーパーティーの手が及ぶトリニティの組織は全て待機状態、絶望的かと思われたところに、シスターフッドの援護が。

「…もう私は行くところまで行くしかないの。」

ミカはあっさり降伏。

結局、補習授業部は第三回の試験に合格し、めでたしめでたし…と終わるわけもなく。

意味深にセイアが全ては破局へ向かう、と言い残して二章は幕を閉じる。

第三章

三章は…あまりにも長くて情報量が多いのでどこまで感想という体裁を保てるかどうか…

セイア襲撃時の話から三章は始まる。

アズサはセイアを襲撃した時、セイアのヘイローを破壊しようとはしなかった。

アズサは、どうしても足掻きたかった。

”Vanitas vanitatum omnia vanitas."

この世の真実と教え込まれても、なお反抗しようとした彼女は、セイアに助言を求める。

セイアの部屋を爆発させ、死亡したように装う…それがセイア襲撃の真相だった。

今思えば、ここから全ての歯車が狂ったのかもしれないが…

その後は物語が乱高下していった。

ようやく迎えたエデン条約の調印式は、アリウススクワッドの手によって破壊され、その契約は歪曲させられた。

第一回公会議の再現、及び複製(ミメシス)。

アリウスは腐ってもトリニティの分派。

トリニティ、ゲヘナ、そしてアリウス。

立役者は揃い、古聖堂で調印は成される。

かつてアリウスを追放したように、歪曲された契約で、トリニティとゲヘナは滅ぼされる…

そんな筋書きだったのである。

アズサはサオリを止めるべく、ヒフミたちと袂を分かつ覚悟で単身、アリウススクワッドに突撃。

ヒフミからもらった大切なぬいぐるみを爆弾に偽装し、サオリたちにダメージを与えることに成功する。

ヘイローが壊されることはなかったが、当のアズサは”人殺し”の烙印を自らに押したことに絶望し、うずくまってしまう。

更には先生は銃弾を受け負傷、情報は錯綜し、ゲヘナとトリニティの互いの憎悪は剥き出しになる。

それでも、アズサも、先生も、諦めなかった。

補習授業部は皆、諦めなかった。

物語は、古聖堂へと集約される。

私たちの物語

再び役者は揃う。

アズサはサオリを止めるために孤軍奮闘するも、及ばない。

そこに現れる補習授業部のメンバー。

アズサはヒフミのような普通の人が来るべきところではないと言い放つが、そこでヒフミはその真の姿を現す。

覆面水着団のリーダー、ファウスト

アズサの真の姿があのガスマスク姿だというのならば、私の真の姿はこれだと。

だから、違う世界なんかじゃない。同じ世界に、手の届く場所に生きているのだと。

さらに対策委員会のメンバーも現れ、ヒフミの肩を押す。

ハッピーエンドを愛する少女は、これからも続けていくと高らかに宣言する。私たちの、青春の物語…ブルーアーカイブを。

そして大人のやり方には大人のやり方で。

先生は新たに戒律を紡ぎ直す。

元はと言えば連邦生徒会長が立案した条約…そしてその彼女が超法規的機関、シャーレの先生の宣言で、戒律は上書きされ、ユスティナの統制は取れなくなる。

手札がなくなったかと思われたアリウススクワッドは、再び古聖堂の地下へ。

しかしサオリは敗れ去り、アツコはサオリと共に逃げることを提案。

そこに現れるゲマトリア・マエストロの「教義」。

先生は「大人のカード」を使い、窮地を切り抜ける。

…そして事態はひとまず収束へと向かう。


ここまで書いて気がついたけど

これは感想というよりストーリーのまとめだな…

まあいっか。



演出面

戦闘

はっきり言ってブルアカの戦闘は退屈である。

それまでのストーリー戦闘はオートで適当にやってきた人も数多くいるだろう。

が、エデン条約編では戦闘のシステムを最大限活かし、ストーリー上の演出として魅せることに成功していた。

最大で編成できるのは前衛(ストライカー)4人、後衛(スペシャル)2人までなのだが、三章の後半部分ではそのシステム上の縛りをぶち壊し、編成画面で表示されていた以上のメンバーが戦闘画面に現れるようになった。

風紀委員、正義実現委員会、対策委員会、みんなが集まって来ているという様子を、各メンバー一人ずつ参加させるなどというみみっちい方法ではなく、いっそ全員出してしまえという大盤振る舞いである。

更に、アズサとサオリの一騎打ちのシーン…ぱっと見では一対一のように見えるが、よく見るとコストゲージが有り得ないスピードで回復している。

ブルアカでは、編成している≒場に出ているキャラクターの数に応じてEXスキルに使うコスト回復量が上昇する。

つまるところ、実際にはスペシャル枠にかなりの数の生徒が編成されていることになるのである。

ずっと支援が飛んでくるしそういうことである。みんながついているのだ。

この見せ方は唸ったなぁ…本当に上手い。

ここ!というところでメインテーマなどを持ち出してくるあたり本当によくわかっている。

対策委員会のテーマ、『Signal of Abydos』が流れ始めた時は発狂してしまった。

対策委員会編ではアビドスからの救援要請だったのが、今度はアビドスへの救援要請になるという構図も非常によく出来ている。

極めつけはやはりヒフミのフルボイスシーンだろう。

それまでボイスがないだけあって、言葉の一つ一つが力強く感じられる。

そしてブルーアーカイブというタイトルを回収しながらのメインテーマである。

もう完璧にズル。そういう展開は弱いんよ。

ブルアカはやはり音楽もこだわっているなぁと思い知らされるエデン条約編であった。

イベントスチル

スチルの数、結構多くてびっくり。

しかもその多くは2nd PVに登場していたものである。

www.youtube.com

これが公開されたのはなんと去年の3月。

すごいなぁ…

絵が良いというのは言うまでもないが、特にミカが黒幕として現れるシーンは思わずゾクっとしてしまった。

補習授業部のメンツを呼び捨てにしている冷徹な感じも相まってである。

スチルの使いどころがあまりに絶妙なので、ノベルゲーでも遊んでいるかのような錯覚に陥った。

ブルアカはノベルゲーだった…?(あながち間違いではない)

以下、諸感想

どこが良かった!と言おうとしても、全部良すぎてきりがないので、特に読みながら唸ったシーンとか、考えさせられたシーンとか、そういったものを以下箇条書きにさせていただく。

  • 日常パートは普通に学園モノしてるあたりメリハリの付け方が上手である。キヴォトスの日常とかいうのはほぼ紛争地域の日常みたいなもんだが()、そうではないちゃんとした青春をも描きつつ、非日常的な騒動と上手く融合させているなぁという印象。
  • ミカが真の裏切り者として出てきた時はまさかとは思ったけどまさかかぁ…と愕然としてしまった。信じることが主題として据えられているのはなんとなく察していたから、ああ、これはお互いがお互いを信じられずに誤解を生んでしまった、裏切り者なんて実はいない物語なんだ…と勝手に頭で解釈していたために脳みそがバグを起こした。ナギサよりも先にこっちの脳が破壊されたよ畜生。
  • ハナコの変態話がまさかセイアの説得というか、諭しに使われるなんてそんな話ある?水着も下着だと思えば下着だから。じゃないんだよ。絶対おかしいよ…ただの露出狂のセリフのはずなのに… まぁでもよく考えれば、ハナコは本当に聡明で、古則の話を踏まえてあの例えを出したのだとすればまぁ不思議ではないのかもしれないけども…
  • 覆面のロジックは本当に美しいと思った。まさか覆面水着団なんてポッと出のトンチキ集団が、こんな形で、しかも感動を伴って再登場するなんて思いもしなかった。アズサのガスマスク-ヒフミの覆面という共通点を上手く使い、一人ぼっちなんかじゃないという強いメッセージを伝えたのである。誰だって裏の顔くらいあるのである。
  • ハナコ、ナギサ様の脳破壊、やりすぎ… いやまぁそれまでの所業を考えれば当然の報いかもしれないけどねぇ… 狼狽え方が本当に笑う。
  • ミカの表情差分が多くてこの子表情豊かだなぁ…となった。涙目になった時はえ!?そんな顔できるの君!?ってなった。何やってんだミカァ!
  • ミカは結局深いことを考えてはいなかったというオチにはなってしまったのかもしれないけど、トリニティの一般生徒を相手にしたシーンではやはりティーパーティーの器なのだなぁと思わずにはいられなかった。結局ミカのゲヘナに対する憎しみに理由なんかなくて。またその憎しみを利用されようとした時に、それを察して突っぱねるくらいの思慮はあるのである。暴力を振るわれてもやり返さなかったし…
  • だからミカ実装してくれない?(
  • サオリないし、アリウススクワッドの憎しみは誰のものだったのか。教え込まれた憎しみは本当に彼女のものだったのか。そうしたことはストーリー中でも語られていたが、だからこそアツコを傷つけられた時に、アズサに向けられた憎しみは紛れもなく彼女のものだったのだろうと思う。それが例え負の感情だとしても、そういう人間じみたところがあるのが確認できたあのシーンはかなり印象的だった。
  • アツコはアズサのことすごい好きそうなんだよなぁ、と。反面サオリはアツコのことめっちゃ好きそうだし複雑な関係だなぁ…
  • マコトのヘイトはもうボロボロよ…パンデモニウムの名誉挽回はないんですか…
  • ヒフミ、覆面水着団のことに関して一言もノーと言ってないのが笑える。ナギサ様がファウストのこととかクルセイダー強奪のこととか聞いたらまた脳破壊されそう
  • アリウススクワッドが覆面水着団のこと知ってたのマジで笑った。立派な犯罪者集団じゃないか…
  • 多分、劇中に出てきた人で、ハッピーエンドを心から信じていた…あるいは望んでいた人は、そこまで多くないのではないかと勝手に思っている。ハナコもセイアも、割と諦めがちだったというか。達観しすぎというか…偶然トリニティに通っていたから悲劇を産まなかっただけで、ひょっとするとアリウスのようになっていた未来もあったのではないかとちょっと感じる。
  • 報連相って大事だなぁと思った。セイアが死んでいないことをミカに伝えなかったのは、結果的に正解だったとハナコは言っていたけれど、セイアの死(と思わたこと)がミカの暴走を引き起こしたのならば、もしかしたらセイアが死んでいないとミカがわかってさえいればここまでのことにはならなかったのでは…と思わないでもない。事実、セイアが生きているとわかって瞬間にミカは降伏したわけだし。
  • 決して、ミカはセイアを、ナギサを、殺したいわけではなかったのだろう。ゲヘナを憎む心が行き過ぎただけで。 いやまぁだけっていうレベルでそうはならんやろという気持ちもあるけど… でも人の気持ってそういうものなのかもしれない。 嫌いなことに理由をつけようとして、思わぬ方向に進んで行って、最後には取り返しがつかなくなってしまう。 往々にしてありそうな話だ。
  • ミカの話めっちゃしてない?俺ひょっとしてミカ好きなんか?
  • エストロは何がしたかったんだ。 今の所、ゲマトリアの連中は見て見て先生作品できた!!!と「教義」を見せびらかしているだけである。ガキか?
  • 弱くて敏感なところを寄せ合う薄い本ください。
  • ハスミもパフェとか食べるのね…でも3つはやりすぎよ…
  • ヒナちゃん、これからはゆっくり休めるといいね… 彼女もまた期待を背負いすぎた生徒の一人。キヴォトス、どういうわけか生徒が自治のために奮闘し過ぎである。
  • 大人のカードって、メタ的な要素ってことで間違いないのだろうか。つまるところ、実プレイヤーが費やしてきた時間を対価に、そこに存在していない生徒を呼び出す切り札…っていう。大人のカードって聞いた時、クレカか林檎カードみたいなもんか?wとか思ってたけどあながち間違いでもないのか…?

結局何が主題だったのか

信じること

これは、互いが互いを信じることができなかったために生まれてしまった悲劇。

ティーパーティーの3人が、もっと互いに信じることができていたら。

もっと遡れば、ゲヘナとトリニティが互いを憎み合うことなどなかったのならば。

他人の心を推し量ることなどできない。だから、信じることしかできないのである。

先生は生徒のことを信じることから始めた。だからこそ、バッドエンドにはならなかった。

アズサはその先の未来を信じ続けた。諭しを与えたセイアですら、諦めていた未来を。

そうして信じた先には、セイアが目を塞ぎたくなるような結末ではなく、ハッピーエンドとは言えなくとも…最悪を回避した結末が待っていたのである。

楽園の証明…?

エデンとはなんだったのか。

証明できないものの証明、その象徴。

劇中では、推し量ることのできないものとして他者の心が挙げられている。

他者の心を推し量れたら、それはもはや他人ではない。

推し量ることのできないものは、信じるしかない…

五つ目の古則に対する先生の答えは、”回答しないこと”であった。

YESかNOで迫られた質問に、それ以外の解を設けること。

証明しないこと。ただ信じること。

「水着も下着だと信じれば下着」なのである。

それこそが、”大人のやり方”。

悪い大人

大人のやり方。先生は大人のやり方に大人のやり方で対抗しているが、すなわち敵対する相手に悪い大人がいるということである。

アリウスに憎悪を植え付けたのは一体誰なのか?他ならぬ大人であろう。

そもそもキヴォトスにおける”大人”という概念が、いわゆる大人という概念と合致するか怪しいところがあるので、この表現は正しいのかはわからないが…

少なくとも、見方を変えればアリウススクワッドもまた、被害者の一人なのである。

自分のものではない憎悪を植え付けられ、駒として使われ。

そしてその憎悪はミカへと、ゲヘナへと、トリニティへと伝播する。

何重にも渡るスケープゴート

ミカはアリウスを味方につけたつもりでいたのかもしれないが、セイア・ナギサ襲撃のスケープゴートに使われたに過ぎない。

しかしアリウススクワッドもまた、ゲヘナやトリニティを憎む誰かのスケープゴートでしかないのである。

悪意の連鎖、連鎖させようとする何者か…大人が存在する。

良い/悪い大人などと安直に対比するのは憚られるが…

まだ未熟な生徒を支える存在としての先生がいることと、生徒を利用しようとする大人がいるという対比は間違いなくあったであろう。

妄言

ここから先は私情も挟んだ考察でも事実でもない何か。

楽園のもう一つの側面

劇中では、証明できないものとして、他者の心が挙げられた。

エピローグでは、セイアが意を新たに、他者の心という証明不可能な問題に立ち向かっていかなければならない…と言う。

しかし、楽園が示唆するもの、あるいは例えていたもの…それは本当に他者の心だけだろうか?

アリウススクワッドがしきりに言っていたこの言葉。

”Vanitas vanitatum omnia vanitas."

これを、私は厭世主義的なものと見た。

反するヒフミないしアズサの抵抗、ハッピーエンドを信じる心…それを、私は人間讃歌の象徴と見た。

だから、エデン条約編はこういう見方もできるのではないか、と考えた。

人間讃歌 vs 厭世主義、と。

この前提に立つならば、楽園…エデンとは一体何だと言うことができるだろうか?

現世である。

今この生が生きるに値するかどうか、それは死ぬ瞬間までわからない。しかし、死んだ人間は、その生が生きるに値したかどうか語り得ない。

これもまた、立派な証明不可能なパラドックス

だとすると、先生の解はどのように当てはめられるだろうか。

生きるに値するか、しないか。すなわち、YESかNOかで答えるのではなく、今この生が生きるに値するのだと、信じること。”いま、ここ”の生を認めて生きること。

だからこそ、「たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない」のである。

僻み

「お前だけが意味を持つのか」。

サオリの言である。

虚しい、虚しい、全ては虚しい。

そう言って苦しみを共にしたはずのアズサは、気がついたら光を手にし、明日へ向かっていた。

サオリとアズサは対照的に描かれているように思える。

虚しさに屈した者と、虚しさに抗った者の対照である。

つまるところ、抗うことをやめた者の僻みでしかないのである。全てが虚しいという言説は。

私がこのストーリーを読み終わった(正確には24話手前までだが)時、最初に感じたのは…感動でもなんでもなく、羨望だったように思える。

私もこんな青春があったならば!と。例えフィクションだとわかりきっていても、である。

私の精神性は正直なところ、完璧にアリウススクワッドの側だ。

世の中はなんと虚しきことか、生きるに値しない私のなんと虚しいことか。

そう心から思っている。

だから何度も何度も思った。

何故お前が、お前が生きる意味を持つのだ、と。

やはり、私は抗うことをやめていたのである。

それでも讃歌を歌うのならば

例え全てが虚しいのだとしても…補習授業部はハッピーエンドを望んだ。抗った。

よくできたお話である。

その影で、アリウススクワッドは利用され、報われず、敗走した。

そんな彼女たちをも肯定するような人間讃歌が、果たしてあるのだろうか?

しきりに言うが…やはりアリウスもまた、被害者の一人として見られずにはいられない…例え彼女たちがしてきたことが、絶対に許されないことだとしても。

楽園があると信じることが…人間讃歌を歌うことが、本当に許されるのならば、それはどのようにしてなのか。あらゆる人類を包み込んで、それを本当に歌うことができるのか。

アリウススクワッドに再び焦点が当たるその時、回答が得られることを期待している。

いやそもそもここまで書いたことは私の妄言なのだが…?(自戒)


終わりに

ああもう、なんかもっと色々書きたいことあったはずなのになぁ。

ここまで激重感情をぶつけられるくらいには、心動かされるストーリーでした。

本当に面白かったと、改めて言いたい。

読む人の数だけ感じ方があったと思う。

補習授業部に感情移入する人もいれば、アリウスに感情移入するような人も絶対にいたと思う。

このストーリーがソシャゲという媒体で公開されてしまったために、見られる人が限られてしまうというのは本当に惜しいこと。

だからみんな推していこうな、ブルーアーカイブ


…結局いつものように何が書きたいのか行方不明になってしまった。

お目汚し失礼致しました。

それではまた。