「ぼうけんのしょ」シリーズをご存知だろうか。
あかざわRED先生の同人誌で、女性上位逆転なしがメインのシリーズモノである。
以前、こんな記事を書いたことがあったが、この時にぼうけんのしょシリーズを中に入れなかったのがあまりにも愚かだと思うほどの出来である。
エナジードレイン、レベルドレイン、テイルボア*1などといったマゾ向け性癖が目白押しで、その美麗なビジュアルとは裏腹にただ人間は餌として魔に屈するのみである。
さらに特筆すべきはそのストーリーラインで、現在刊行されている11の作品に連関がある。
ネタバレは避けるが(エロ同人誌のネタバレって何?)、人間の暗部を魔物に見透かされるかのような巧妙なストーリーが織りなされており、ついストーリーが気になって読み進めてしまう。
サキュバス搾精モノの金字塔とも言えるべき作品群であり、後世に遺すべきものの一つである(?)。
私がお気に入りなのは「まことに ざんねんですが ぼうけんのしょ4は消えてしまいました。」の22~23ページ、ザッシュの精液をサキュバスとシスティナで口移しするシーンである。
人間を餌にするサキュバスと、世界を救った勇者パーティーの一員であるはずの白魔術師システィナが、その教え子の精液を淫猥に共有する様は背徳の一言に尽きる。
その次のシーン、ザッシュにその欲望を曝け出させるシーンは更にその背徳感を増させるのだがそれはぜひ購入して頂きたいところである。
私はレベルドレイン・エナジードレインモノがかなりの好みなのだが、そもそもの絶対数が少ないのみならず、絶対的に女性優位であるというものが少ない。
やはりサキュバスが出てくる以上は人間は餌でなければならないし、人間にとって都合のいい存在であってはならないと思うのである。
「ぼうけんのしょ」シリーズは、その点をしっかり抑えている(7~8は展開の都合上、そうでない描写も挟まりはするのだが)。
しかし、よく考えてみると、実はその”餌であるべき”という命題も、実は人間の都合の良いように出来ているのではないか?という疑問がある。
そもそもな話、サキュバスが精を搾り取るために妖艶な人間の形をするという伝承そのものが出来すぎた話であるし、何らかの超自然的な存在に身を委ねたいと思うのは、人間の性なのかもしれない。
例えそれが死を伴う快楽であったとしても。
…と思ってwikipediaを調べに行ったら、妙に癖的な方に詳しい記述があって草。
能力的には幻覚や淫夢を見せたり、魔眼や体液に含まれるフェロモンのような催淫成分を周囲に蒸散させたリ、淫気を増大させて対象を魅了するサキュバスが多く、たいていは対象の性欲増大と同時に精子製造能力をブーストさせて大量製造させ、それを搾精して犠牲者を死に至らしめる力を有している。しかし、夢魔的なサキュバスの中には性交せずにエナジードレインと言う形で、キスなどで接触相手の精力(生命力)や経験、ロールプレイングゲームで言うところのレベルを奪うタイプもいる。
誰だよこれ書いたの。解像度が高すぎるんだわ
というのはさておき、甚く魅惑的な禁じられたものとしてサキュバスを描くのであれば、逆説的にそれは人間が最も望むものということになる。
果たして、餌として捕食されるというマゾヒスト的な発想が、真に人間にとって都合の悪いものなのだろうか?
極端に言ってしまえば、糞尿を垂れ流しながら性交を繰り返し、次の世代を残すということのみが、これまで人類が繰り返してきたことである。その繰り返し自体がなんの意味も持たないことは自明だ。
ある授業のレポートで私が書いた内容である。
全文に興味がある人はご一報。授業趣旨に沿うような内容だけども。
人間存在そのものに意味はない。
故にその種の存続そのものにも意味はなく、その性交の繰り返し自体にも意味はない。
もしかすると、サキュバスというのは、その絶望の果てにある破滅願望なのかもしれない。
生殖行動であるはずの性交によって、その生に後継ぎなき終わりを告げ、より上位の存在の糧となる。
そんな倒錯を実は人間は望んでいるということではなかろうか。
つまるところ、私が時たま言っている”権威主義的な性癖”というやつである。ほぼ妄言だが。
※以下ぼうけんのしょシリーズの軽いネタバレと考察
システィナはなぜサキュバスに加担しているのか?という疑問がある。
少なくとも勇者ウィルの追放後から暗躍していたであろうというのは年表からもわかることであるが、スライムによる人里の壊滅以前からウィッチサキュバスと接触があったであろうことを匂わせているのが6の終わり。
その後8はマルチエンディングの仕様を取っているが、おそらく分岐前までが正史であり、その後の展開は9に続くと考えられる。
ルシルとエミルの事の顛末を描かなければ、3〜5に続かない。
システィナの目論見が進んでいるということを考えると、ウィッチサキュバスとシスティナの間でなんらかの取引が成されたのだろうか。
元々システィナが勇者パーティーの一員だったことを考えると、システィナがやろうとしているのは、勇者の血脈を魔族に伝播させるという人間への復讐であるように思われる。
更には、少年たちをサキュバスに転生させるという匂わせもあるため(4参照)、快楽に狂ったシスティナが人間界をサキュバス塗れにでもするつもりなのだろうか?今後が気になるところである。9紙で欲しかった。
読み込みが足りないのでひょっとしたら見落としてる情報があるかもしれない。
何故かって、そりゃあ一抜きしたら他の作品をそんなに何回も見る体力はないでしょうよ…
だってねぇ、この異常性癖塗れのこの俺がどちらかといえば一般性癖よりの同人誌にここまでご執心なのは異常事態。
サキュバスのお姉さんの描写もロリの描写もショタの描写も類稀な極上品であるからこそ敬意を持って接する(意味深)べきである。
好きなシーンを挙げればきりがないが、5の21ページ、システィナによる搾精シーンとか8の30~31ページ、エミルのダブル駅弁シーンとかもう本当に本当に。
あと8のエンディングの一つ、エミル同族化*2なんかもうたまらなさすぎる。
同族化の話で言うと、以前触れた”サキュバスの巣”にある「サキュバス無限地獄」は印象深い。
やはりサキュバスといえば真っ先にこのサイトが思い浮かぶ程度には有名であろう(多分)。
よく考えると、即死回避体質が故にエナジードレインされ続けるというこの6・8の構図自体「サキュバス無限地獄」のオチに近いものがあるし、あかざわRED氏ももしかしたらサキュバスの巣にお世話になった過去があるのかしらん、などと考えたりもする。
HPバーとかMPバーの描写があるのも大変良い。
RPG的な文脈に乗せている以上、ステータスを視覚化させ、それが減少しているという様を見せつけられるのは大変に興奮するものなのである。レベルドレインとかしっかりドレインされてる描写がないと興奮できないのだが、案外数値化された描写が少ない。由々しき事態だ。
vore的な表現も界隈では一般的であるものの、それなりに名のしれた人が同人誌のシリーズの中で多用するというのは珍しいのではないだろうか。
丸呑み・吸収なんてそこまで多く見られるカテゴリーではない。あまりにも美味しすぎる。
シリーズ全体を通して、自らの快楽を優先し、他人を犠牲にするような愚かな人間の姿を描き出そうとしている気がする。1~2然り、4のザッシュ然り、「おいしいごはんのあるまち」然り。
システィナもまたその一人なのであろう。
一体このストーリーがどんな退廃的な結末を迎えるのか、楽しみでしょうがない。
とにかく良いから買ってくれ。頼む。語りたい。
以上、ぼうけんのしょシリーズフォロワーの独り言でした。